前髪が死ぬと私の心は死ぬ

 

メイクはしなくても、前髪だけはセットする。

 

世界で一番嫌いなのは前髪を崩す風。

 

地下鉄のホームで、曲がり角で、

 

あらゆる場面で私の前髪は危機に晒される。

 

 

念入りにセットしても一吹きの微風で容易く崩れてしまうか弱い子。

かわいい。

 

頑張れ前髪、負けるな前髪!

 

どんなに鼓舞しようが前髪相手には無意味である。

 

私が守ってあげなければ…

 

毎日前髪専属パトロンである。

 

前髪をこんなに気にするようになったのはいつからだろう。

 

高校に入ったあたりに姉からヘアアイロンを貰った。

 

アイドルの前髪にしか目がいかなかった。

 

 

渡辺麻友の絶対に崩れない前髪は”アイドルサイボーグ”の異名を加速させた。

 

前髪に無防備さを許した瞬間アイドルじゃなくなるのだろうか?

 

 

いくらアイドルが好きでもアイドルにはなれなかった。

でも前髪だけはアイドルと同じになれた。

 

前髪から解放された日からきっと私は大人になるのだろう。